拓斗の口から立ち上げる部活動案が出されたあと、理樹は放課後になって、この学校の部活動の規律はかなりゆるいのではないだろうか、と遠い目をした。

 今、理樹の目の前には、帰りのホームルームを終えた担任の杉原から、一枚の紙を手渡された拓斗が自信たっぷりの様子で立っていた。見せつけるようにこちらへ突き出した手には、『部活申請書』の文字が印字された書類用紙がある。

「本日、無事に部活動として許可を頂き、明日には使える部室が決まります!」
「…………」

 理樹は、校長印などが押されたその申請書に、自分の名前の一筆の他、九条名字の印鑑が押されてあることに気付いていた。

「俺の名前がしっかり入ってるな……。というか、押した覚えのない印鑑まであるんだが」
「細かいことは気にするなって。お前のおっさん臭い達筆を真似てみたけど、案外そっくりに仕上がったと思うんだ」
「そこで威張るなよ」

 既に部活動に向かった生徒もいて、教室内に残っていたクラスメイトは三割程度だった。部活が出来たらいつか休憩所に使わせてくれ、と言っていた木島も、今日はバンドの集まりがあるからと飛ぶように帰っていた。