いつもの俺ってなんだよ、その二つの台詞も特に変わりないだろ。

 ネクタイを締めた理樹は、木島に半眼を向けた。ほとんどの男子生徒が着替えを終えて、女子が戻ってくる前にと、それぞれ体操着を片付けたり次の授業の教科書を出したりと動いている。

「あーあ、目的もなくくつろげる休憩所が欲しいなぁ」

 理樹がブレザーの制服を整え終わったタイミングで、木島がそう言った。

 その時、拓斗がガバリと立ち上がって右手の拳を掲げた。

「よしっ、分かったぞ。『読書兼相談部』を立ち上げる!」
「は……?」

 こいつは、いきなり何を言っているんだろう、と理樹は思った。動いていた他のクラスメイトたちも、同じ疑問を浮かべた表情で拓斗を見つめる。

 男子一同の視線に気付いた拓斗が、「へへっ」と得意げに笑った。

「読書部の方が好きに過ごせると思ったんだけどさ、相談を受けるってのも楽しそうだろ。面白いことなら大歓迎」

 そこで彼は、くるりと木島を振り返って、意気揚々と宣言した。

「つうわけで木島! 部が立ち上がったら『相談しにきました』って一筆くれるだけで、部室内で好きに過ごせるぞ」
「マジかッ、菓子持ちこんでくつろぐわ!」

 木島が素早く反応し、椅子の背から身を離して元気良く挙手した。

 そう簡単に部活の申請が通るわけがないだろう、と理樹は気遣うような目を向けてそう思った。