すると、沙羅が静かに立ち上がった。騒いでいたクラスメイトたちがピタリと私語を止めた中、彼女がこちらへと顔を向けて唐突にこう言った。


「放課後に美味しいケーキのカフェに行きませんか!」


 そう可愛らしい声で叫んだ沙羅が、こちらに手を差し出して、またしても頭をきっちり九十度下げた。

 潔い切り替えというか、ストレートに堂々と放課後の帰りを共にしたい、と提案してくる様子はどこか漢らしい。その様子を正面から見ていた理樹は、本来は男女逆でやるやつだよな、と冷静に分析した。

 そもそもな、クラスの女子たちよ。見ての通り、彼女に擁護の必要はないだろう。
 こいつ、結構精神的にタフだと思うぞ。

 理樹はそう思案しながら「断る」と、ぴしゃりとそう告げた。

             ※※※

「モテる奴なんて滅びればいい」
「…………」

 一年生で一番の小動物系美少女で、最近は妹にしたいナンバーワンの女子生徒、といわれるまでになった桜羽沙羅の昼食の誘いを断ったことで、クラスの女子生徒に非難された。