自分のクラスのはずなのに、なんて落ち着かない教室なんだ、と理樹は無表情の下で思った。

 一人だけ別クラスの女子生徒が混じっているという違和感が拭えないし、男たちは学年一の小動物系美少女の邪魔をするまいと緊張して口数がない。
 そんな男子に対して、女子生徒たちは「応援しているからねッ」と嫌な方向に進化を遂げて、まるで妹を見守るような熱い視線を沙羅に送っている状況だった。

 拓斗が先に着席する中、理樹は自分の席の、その間横に用意した椅子に座っている彼女を正面から見下ろした。

 そわそわと落ち着かない様子から、前世の付き合いもあって何か用があるらしいとは分かっていた。黙って見つめていると、沙羅がしばらくしてから、ふっくらとした小さな唇をきゅっとして、言うぞと決意したように口を開いた。

「あの、よければ今日、一緒に食堂でお昼ごはんを――」
「俺は弁当派だ。断る」 

 理樹は間髪入れず断った。

 その直後、周りの女子生徒たちから「お昼くらい一緒にしてあげなよ」「せっかく勇気を出して待ってたのに可哀そうよ」と非難の声が上がった。