翌週の朝、いつも通り拓斗と登校した理樹は、自分が入る教室を間違えたのだろうかと思った。なぜか自分の席の横に椅子を置いて、ちゃっかり座って待機している沙羅の姿があったからだ。

 彼女は少し背をすぼめるようにして華奢な肩を内側に寄せ、俯いたままそわそわとしていた。スカートを挟むように太腿の間に入れられた手が、覗く彼女の白い太腿の柔らかさを伝えている。

 周りの男子生徒たちがそこへ目を向けないよう、露骨に天井を仰いだり机に突っ伏して悶えていた。
 それに気付かない沙羅の鈍さには、心底呆れた。

 いつも通り一緒に登校した拓斗が、チラリとこちらを見た。どうするよ、と目で問われた理樹は「どうするも、行くしかないだろう」と目頭を少し押さえて自分を落ち着けてから、教室内へと足を進めた。

 こちらの存在に気付いた沙羅が、パッと顔を上げて笑みを咲かせた。

「おはようございます、九条君」
「………………」

 クラスメイトから向けられる視線を、ひしひしと感じる。