その時、ガラリと扉が開く音がした。一体誰だろうかと口をつぐんだ拓斗と共に目を向けてみると、白いカーテンが少し開けられて、珍しくむっと頬を膨らませて肩を怒らせた沙羅が顔を覗かせた。


 拓斗が、きょとんとした様子で瞬きした。「なんだか普段見ない感じの可愛い顔してるけど、どうしたんだ?」と空気を読まない発言の途中で、理樹は彼の口を素早く手で遮っていた。

 さすが学年一の小動物系美少女。全く怖くない。

 感情を堪えて潤んだ大きな瞳は、威圧感がないうえ、きゅっと結ばれた唇だってまるで不快感を覚えさせない表情を作り出していた。怒っていても可愛い、というのは美少女の特権であろうか。
 というか、なんで彼女はここに来たのだろうか。ラブレターには昼休みに話しがしたいと書いてあったはずなので、そのまま保健室に突撃してくるというのも変である。
 
 もしや、青崎レイと対峙した件で、怒り心頭なのだろうか?

 同じ中学出身の出身であり、レイはあの時『彼女と撮った写真を』と言っていたくらいだから、もしかしたら一緒に過ごすくらい仲が良いのかもしれない。