幼稚園の入園式に我が儘をいって、理樹は地元の小学校を経て中学に進学した。
 そして今年の春。自立心を養うという九条家男子のしきたり従い、マンションで独り暮らしを始めて、高校デビューを迎えることになった。


 学校に関して、一歳ずつ年が違う兄たちは「うちの学校においでよ」と寂しがったが、理樹としては一般の学校の方が合っていた。前世の自分が、父の代でようやく築いた成り上がりの貴族だったせいもあるのだろうと思う。

 バカみたいに騒ぐ男子生徒がいて、それに対して言葉使い悪く怒る女子生徒がいたりする。彼らが揃って走り回ることも珍しくなく、胡坐をかいていようが頬杖をついてぼんやりしていようが、それが目立つということもないから、家にいるよりもかなりリラックス出来た。

 前世でも漆黒の髪だったから、今の日本人となった『九条理樹(じぶん)』に違和感はない。藍色の瞳が茶色になったのは、些細な違いである。