「いきなりの展開だったとはいえ、女の子だと気付いたから本気で殴り返さなかったんだろ? お前が喧嘩に強いのは、俺は中学の先輩たちをぶっ飛ばしたのを見て知ってるからな」

 ああ、そんなこともあったな、と理樹はなんとなく思い返した。

 以前通っていた中学では、不良と呼ばれている類の先輩たちのグループがあった。特に荒れていたのは一つ上の学年で、結局彼らが卒業するまでの二年間、何度か相手をするはめになったのだ。

「沙羅ちゃんとあの子、有名な男子禁制の中学出身らしくて、みんなは風紀の子が女の子だって知ってたみたいだ。中学でも制服はズボンだったから、うちでもお願いして、風紀委員会に所属することを条件に許可されたらしいぜ。ちなみに風紀委員会は制服の色が黒なんだとさ。新人期間が終わったら、彼女も黒い制服を着ることになるらしい」

 青崎レイは、中学時代に風紀委員長を務め、体術・武術大会で優勝するくらいの腕前だったという。そんな彼女を、この高校の風紀委員会が抜擢しないわけがない、というのが拓斗が話を聞いた一年一組の生徒たちの憶測だった。