理樹は吐息交じりにそう呟いた。どうにか頭に衝撃がいかないようにしたものの、打った背中の痛みに呻くレイを見下ろして、叩きつけてごめん、と声を掛けようとした時――

 ふと、彼の胸部を押さえている腕に違和感を覚えた。

 それは慣れた男の固いものではないと気付き、理樹は加えていた力を緩めた。痛みが治まったらしいレイが、組み敷くこちらを茫然と見上げてくる。前髪が乱れて露わになったその顔をまじまじと見れば、どう頑張っても同性の少年には見えなかった。

 男と女の違いくらい、前世の人生経験でよく分かっている。

 この少年は――いや、この子は女性だ、と察して理樹は硬直した。

 しばし、どうしていいのか分からなくなった。近くから見下ろしたまま、ゆっくりと腕を解くと、彼女が声なく口をパクパクとさせてみるみるその顔を赤面させた。

「おい、どうした?」

 なぜそこで顔が赤くなるのか、すぐに察せなかった。
 もしや頭の方にも衝撃を受けさせてしまったのだろうかと心配になり、地面に当たらないよう支えていた手を動かせて探ってみた。しかし痛がる様子がないまま、彼女の顔が更に熱を帯びて真っ赤に染まった。