この喧嘩っ早そうな新人風紀部員よりも、面白そうだと言わんばかりについてきた拓斗が、ワクワクとした視線を校舎の角から向けてくるのを背中に感じて苛々した。

 というか、お前なんで付いてきた?

 追い返せば良かっただろうか、と途中で気付いた時にそうしなかった自分を思い返すと、ますます苛立ちが増した。思わずそれが表情に滲んで眉が寄ると、レイがむっとした表情を作った。

「お前より、僕の方が三年も彼女のことを知っているだけで嫉妬するとか、器が小さい男だな」

 完全な誤解である。こちらは全然嫉妬などしていない。
 むしろ、なんだか最近暴走しつつある彼女をとっとと掴まえて、勝手に彼氏彼女としてゴールインしてくれと言いたい。

 勝手に誤解されたうえ、一方的に悪い方へ評価を押し付けられるのは好きではない。理樹はすぐに反論したくなったものの、どうしてか、普段親友の拓斗やクラスメイトの男子に向けてやっているように、思い切り顔を顰めて容赦なく言葉を返すという態度に出られなかった。