次の授業が始まるまで、残り十五分。

 真剣な話なので二人だけでしたいというその男子生徒の要望から、すぐに戻ってくるし構わないかと考えて、理樹は彼に続いて上履きのまま廊下の窓を乗り越え、夏日対策にとまばらに植えられている中庭の木々を抜けた。

 伸びる校舎の角を曲がった先は、窓もない校舎の壁が日差しを遮り、非常用出口が一つだけある芝生が広がっていた。
 そこに到着するなり、少年にしてはやや華奢な体格をしたその男子生徒が、癖のない髪を揺らせて、くるりとこちらを振り返った。

「僕の名前は青崎(あおざき)レイ、沙羅ちゃんとは同じ中学出身だ」

 仁王立ちで、風紀委部員の男子生徒――青崎レイが開口一番にそう告げた。

 理樹は、やはり恋路問題あたりだろうかと推測した。本気で行動を起こしているらしい彼には悪いが、こちらとしては、ありきたりな嫉妬のパターン的展開に呆れて、まともに相手をしたいという気力が微塵にもわいてこないでいる。