「九条理樹! 桜羽沙羅のことで貴様に話がある!」

 ラブレターを受け取るという面倒な朝から始まった、三時間目の授業が終わり。授業の終了を告げた鐘と共に、壊されるのではないかという勢いで教室の扉が激しく開かれた。

 ひどい扉の開閉音に加え、一年五組の教室に飛び込んできたアルトの怒号も相当なものだった。
 教室に居た全員が驚いて目を向け、教材の片付けに入ろうとしていた歴史担当の教師、二十代後半の鈴木も、ふわふわとした癖毛に若白髪が目立つ髪を揺らせて、一体何事なのだろうという表情をする。

 教室の入り口に立っていたのは、やや華奢な体躯をした男子生徒だった。女子と男子の平均身長の間、といったくらいの背丈ほどで、目鼻立ちが整っていて目はキリリとしているものの、どこか随分と可愛らしくもある顔立ちをしていた。

 漆黒の髪は癖がなく、やや長めだ。髪型をいじれば女の子に見えそうな気もしたが、理樹にとってそんなことはどうでもよかった。