そういえば、彼女はどうなのだろう?

 ふと理樹は、桜羽沙羅が結構いいところの社長令嬢であることを思い出した。こちらの学校の方が家も近いとは言っていたが、自分と同じように車の送迎は無しで通学しているのだろうか。

 そう思い返していたら、今朝も靴箱に待機していて、見事なお辞儀と共に「ラブレターです!」と漢らしく直接手渡してきた彼女の様子が蘇った。なんだか、どっと疲れを覚えた。

「……ハッキリ断っているってのに、他にどうしろってんだ」

 思わず苦々しくぼやいてしまった。

 すると、こちらを眺めていた拓斗が「確かになぁ」と相槌を打ってきた。

「ほんと、お前の顔のどこに惚れる要素があったのか謎。しかも最近は『お話してみるともっと素敵な人で』とか、クラスの仲良しの女の子に言ってるらしいぞ?」

 そんなに会話はしていないし、濃い話をした覚えもないんだが。

 そもそも彼女がよく分からない。毎日、元気いっぱいにぶつかってくる状況が理樹には理解し難かった。恋というよりは、小さな女の子が、近所のお兄さんを追い駆けるようなアレに似ている気がしないでもないが……。