「勘弁してくれ、平穏な高校生活が遠のいていく……」

 この一週間ですっかり噂が知れ渡ったのか、どこへ行っても『高校生活初日に、一学年で一番の小動物系美少女に告白された人』と言われた。その言い回しがランクアップしている気がしないでもないが、理由については考えたくない。

 しかも、人生初のラブレターが、数十枚に及ぶ便箋が詰められているとか、なんか嫌だ。

 ひとまず全文読んだ。自分はこんな物がこういう理由でとても好きだが、あなたはどうですか、といったような話題が延々と続き、最後は「昼休みに話がしたい」という呼び出し文面でシメられていた。
 つまり、またしても告白するつもりなのだろう。全然嬉しくない。

「よっぽど魅力的な男らしいという噂が密かに」

 前の席の親友、拓斗がちっとも嬉しくない噂を教えてきた。

 理樹は溜息を堪えて頭を上げ、むっつりとした仏頂面を、正門が見える窓の外へ流し向けながらこう答えた。