片腕に抱えた重さも感じていないような足取りで進むと、理樹は屋上の扉を開けて、校舎内側へと彼女を降ろした。


「俺はお前の告白を『断った』。じゃ、そういうことで」


 そう告げて、びっくりした表情の彼女の返事も聞かず、理樹は屋上の扉を閉めた。これで用は済んだとばかりに、弁当を食うかと考えて親友のいるところに引き返すべく踵を返した。

 振り返ったところでようやく、弁当を食べ進めていた拓斗が変な顔をして――
 というより気味が悪いボーズを取っていることに気付いた。奴は乙女座りで気持ちの悪い表情を浮かべて、小指を立てた手を口許に当てている。

「…………ヤだ、理樹君ったら。非モテ野郎のくせに、アタシ、迂闊にもトキメキそうになっちゃった」
「どういう意味だよ」

 なんで女口調なんだろうな、と思いながら、理樹はそばに腰を下ろして弁当を引き寄せた。すると、拓斗がポーズを解いて「だってさ」と言葉を続けた。

「普通、ひょいって軽々と女の子を片腕で抱き上げるとか、やらないだろ?」

 指摘された理樹は、それが前世の頃の仕草だったと思い出した。