「……はぁ。あのな、そういう恋愛の好き嫌いに関しては、普通はもっと時間をかけて考えるもんだろう。お前、もう少し勉強した方がいいぞ」
「席次はいつも三番内でした!」
「マジかよ」

 俺はどう頑張っても二十番から十番台で、一桁台に行ったことがないんだが、と理樹は口の中で呟いてしまった。
 拓斗が「そりゃすげぇ、俺なんて下から数えた方が早いのに」とこぼし、興味を覚えた目を沙羅に向けてこう言った。

「ひとまず自己紹介すると、こいつの名前は九条(くじょう)理樹(りき)。俺は、その親友の佐々島(ささじま)拓斗(たくと)だ。よろしくな、沙羅ちゃん」
「ありがとうございます! 九条君ってお名前なんですね!」

 惚れたというのなら、先に相手の名前を調べるのが普通ではないだろうか?

 理樹は、勝手に自己紹介を行った拓斗と、まだこちらの名前も把握してしなかったらしい沙羅の様子を物言いたげに見た。けれど面倒なこともなく話は終わってくれたので、ひとまずそこは流すことにした。