前世や過去の再会が絡んでいるわけでもないようだ、と現在置かれている状況を把握したものの、謎はますます深まってしまい、理樹は確認するように続けて尋ねた。

「朝のあれが初対面だったわけだよな? 顔を見てすぐ告白するとか、おかしくないか?」
「おかしくないです、一目で好きになりました」

 そう言ってすぐ、沙羅の頬が赤くなった。彼女が照れたように頬に手をあてて恥じらう様子を見た拓斗が、「うわぁ……恋する乙女の顔だ」と口に手をあてて、それが理樹に向けられているのが信じられないと呟いた。

 ああ、分かった。こいつはただの馬鹿だ。

 理樹は頭に鈍痛を覚えて、悩ましげに目頭を押さえた。前世を思い出した訳でもなく、幼稚園の一時の出会いを覚えて捜していたわけでもなく、彼女の中で自分とは『今』が初対面なのだ。

 彼女は一目見ただけで自分に惚れたといい、感情のままにすぐ告白するという行動に出ている。そこを考えてみると、難しいことは何も考えていないのだろう。