「言っとくけど、理樹は喧嘩とかめちゃくちゃ強いぜ? それを見てた三年の運動部の先輩たちが、手合わせ願おうって乱入してきて、見てたやつらが慌てて生徒会長を呼びに行ってさ。そうしたら代わりに来たのが風紀委員長で、笑顔のまま『この脳筋共が』って凄んで、朝の騒ぎはどうにか終息したって感じ」
「朝からカオスだな。いつも遅刻ギリギリ登校で助かったわ」

 しっかりポッキーを食べてから、木島がそう口にした。
 その様子を見ていたクラスメイトの田中が「木島、表情がごっそり抜け落ちてるぜ」と指摘した。他の男子生徒も「その顔はキツイから戻したほうがいい」とアドバイスする。

 木島は放心状態から回復するなり、ドカリと椅子に腰を下ろして、わざとらしいくらい大きな溜息をこぼした。

「にしても、とうとう第一号のカップルが誕生かぁ。しかもうちのクラスかよ」
「あら、カップルは一組だけじゃないわよ。そっちの佐々木だって、昨日から彼女持ちだもの」
「ぶほっ」

 親切に教えてくれた女子生徒の言葉を聞いて、木島が大きく咽た。

 その直後に勢いよく振り返った木島の視線に気付いて、拓斗が「ん? 何か?」とにっこり笑みを向ける。教室内の煩さが、若干静まった。