「沙羅ちゃん、心配してそわそわと待ってるぜ。また寄越しても平気か? いちおう、訊いてから中に入れようと思って、廊下の方で待ってもらってんだ。保険の先生には、ちょっと頭打っただけだから少し休ませたら連れて帰るとは言ってある」
「そうか、色々とすまんな」

 短く礼を告げると、拓斗が「こんくらい協力するさ、親友」と少し照れた笑みを浮かべた。これまでの付き合いから視線だけで察してくれたのか、彼は分かってるというような顔で、そのまま立ち上がる。

「さてと。理樹と沙羅ちゃんは話し合うということで、俺らは一旦退出するか、レイちゃん」
「ひぃぇ!? ちょっと待て、なんで僕の肩に腕を回すんだッ」
「あははは、ただの友情のスキンシップだって」

 賑やかな彼らが仕切られたカーテンから出て行き、扉の開閉音が二回上がった後、拓斗とレイと入れ替わるようにして小さな足音が近づいてきた。

 カーテンがそろりと揺れて、そこから沙羅が、おずおずと顔を覗かせた。