気になるからという理由でいるなら、女子生徒一人に対して男子生徒が二人にならないよう、空気を読んで屋上出入り口の後ろに隠れるくらいするのが、常識ではないだろうか。

 すると、美味しそうな匂いを漂わせたまま、拓斗が不思議そうにこちらを見た。

「だって気になるし? あと、すげぇ腹減った」
「お前、マジで自由だよな」

 いいよもう勝手にしろ、と理樹は片手を振って諦めたようにそう言った。

 すると、それをどう受け取ったのか、拓斗が蓋を開けた弁当を見下ろした。それから、全く同じ種類の弁当である理樹の分へ視線を向けると、三秒ほど思案するような間を置いてから、その目を彼へと戻した。

「お前の分の弁当に入っているエビフライ、食ってもいいか?」
「駄目に決まってんだろぶっ殺すぞ」

 勝手にしろとは言ったが、弁当の中身を好きにチョイスして食っていいとは言っていない。特に好物のエビフライの件だ。理樹は非難と警告と殺意を込めて、一呼吸でそう言い切った。