そう告げる彼女の潤んだ大きな瞳には、迷いがなかった。

 真っ直ぐ正面から見てそう気付かされた理樹は、どうして、と小さく口を動かせていた。
 どうしてそんなに真っ直ぐ『好き』だなんて言える?

 それに気付かなかった沙羅が、表情の変化がない理樹を見て、漂う沈黙に慣れない様子で弱々しい苦笑を浮かべた。場の空気を少しでも和らげるように「実は」と言って、言葉を続けた。

「もっと早く出会えていたら、中学生だった頃のあなたを知ることが出来たかもしれないのにって、私、そんなことまで考えてしまいました」
「…………『もっと早く』『出会う』……?」

 彼女のそんな声が耳に入った時、頭に鈍い痛みを覚えた。似たような台詞を聞いたような、言われたことがあったような気がして、理樹は記憶の中を探った。

「佐々木君が、中学校に出会った最高の親友だって、男の子たちに言っていたのをチラリと耳にしたんです。もし女子校を選ばなかったのなら、小学生だった頃のあなたにも会えていたかもしれないなぁって想像して、佐々木君にまで嫉妬してしまったと気付きました」