時刻は午後六時半。十数分前に再び拓斗が、今度は鞄を持って出て行ってから室内は静まり返っている。
 理樹は一人になった部室の中央の、テーブルが端に寄せられた代わりに、二脚の椅子だけが置かれたそこの片方に腰かけて、ぼんやりと窓の向こうに見える景色へ目を向けていた。

 小じんまりとした部室の西側一面に並ぶ窓には、空に浮かぶ雲が、明るい夕焼け色に照らし出されている光景があった。締め切った窓の向こうには、運動場も体育館もないせいか、やはりとても静まり返っていて、しんとした沈黙が漂う。

 校内放送用のスピーカーが設置された時計が、どこか懐かしい響きをもって秒針を動かせている。どの世界でも時計は同じ速さで、同じように刻(とき)を刻むらしい、と、そんなつまらないことを考えてしまった。

 その時、待ち合わせの予定時間を数分過ぎて、部活を三十分早目に切り上げた沙羅が部室にやってきた。
 チラリと顔を向けると、後ろ手にそっと扉閉めた彼女と目が合った。