いやとりあえず聞けよ、と拓斗は言って話を再開した。

「つまりさ。転生したお前が悪役で、彼女を後悔させて不幸にする男とか、そんなゲームみたいな設定あるわけがないんだって。愛し合っていたから、こうして転生して巡り合えたと考える方が、ロマンチックで運命的で『さっすが神様!』てなると思うけどな」

 そこで拓斗は、自信たっぷりに胸を張った。日頃こちらが指摘しているように「理樹は漫画の読みすぎなんじゃね?」といっちょ前に言い返してくる。

 理樹は思わず、ふっと笑みをこぼした。その気遣いに、少しだけ救われた気がした。

「拓斗はポジティブだな」
「お前がネガティブなのがらしくないんだよ」
「そうか、確かに『俺』らしくないな。……ありがとう」
「へへっ、だって親友だもんよ」

 拓斗はそう言うなり立ち上がった。理樹が問うような眼差しを向けると、いつもの呑気な笑顔でこう告げた。

「とにかくさ、俺が場を設けてやるから、まずはお互いで話し合えよ。このままじゃ、どっちも苦しいまんまだぞ」

 じゃ、ちょっと調理部行ってくる、と返答も待たずに拓斗は部室を出た。