その大きな瞳が、収まり出した驚きと変わるように、安堵を覚えた様子で潤い度を増した。沙羅は口を少し開閉させたものの声はなく、びっくりしすぎました、とその表情で語る。

 前世での長い付き合いからそれを察した理樹は、「俺だって驚いた」と答えた。少し腰を屈めて腕で支えた彼女を覗きこんだ姿勢のまま、こう続けた。

「俺を避けてくれるのは問題ないが、こうも要注意人物みたいな反応をされて、お前が怪我でもしたら困るんだが」

 彼女はかなり運動音痴なのだ。もし本当に階段から落ちたり、段差でつまずいて派手に転倒してしまったら……と考えると肝が冷える。女の身で打ちどころが悪かったら大変だから、やめてくれと言いたい。

 遅れてやってきた拓斗は、二人の無事を確認してから、少し離れたところで足を止めて様子を見守っていた。
 理樹は少しずつ手から力を抜いて、沙羅が自分で立てるようだと分かったところで、彼女から手を離した。

「……………だって、私ばかりがいつも、ドキドキさせられているの……」

 今だってそうよ、と沙羅が俯いてそう呟いた。