二人分の体重を支える手摺りを掴む手に力を込め、片腕で抱きとめた彼女を、力任せに廊下側へと引き戻す。

 理樹は脇に沙羅を抱え持ったまま、遅れて拓斗が駆けてくる足音を聞きながら「間一髪だったな……」と小さく息を吐いた。危険が去ったのに静かなのが気になって、一言も発しない彼女の方を確認してみると放心状態だった。

 触れている腕からドクドクと脈打つ彼女の早い鼓動が伝わってきて、驚きすぎたらしいと分かった。
 理樹としても驚かされたのは事実だ。
 思わずもう一度息を吐きながら、残った方の手で髪をかき上げた。

「あのな。頼むから致命的な『おっちょこちょい』だけは、やめてくれ」

 吐息交じりに口にした理樹は、両手で沙羅の脇を抱え持ってゆっくり慎重に床に降ろした。彼女がすぐに自分の足で立てるのか判断できず、ひとまずは軽く支えたまま様子をみることにした。

 髪を留めていたリボンが、今にも外れてしまいそうになっている。戸惑うように両足を床についたところで、彼女がこちらをようやく見つめ返してくれた。