文系の部活生のほとんどは、二階の図書室前を通過し、外の景色が眺められる短い渡り廊下を歩き、そして音楽室や化学室などがある校舎の教室から反対側へと行くルートを取っていた。部活動が始まってから、理樹と拓斗も放課後になるたび利用している。

 渡り廊下に踏み込んだところで、拓斗が横目にこちらを見た。

「部室と反対側の方に進めば、調理室方向に行けるぜ?」
「しつこいぞ拓斗、そのまま渡り廊下から外にダイブするか」

 理樹は、正面を見据えたままそう言った。ついでとばかりに、指をゴキリと鳴らしてやる。

「……親友よ、その横顔、マジだな。お前に持ち上げられて放り投げられる光景が容易に想像出来て嫌だ。確か中学校の時も、よく上級生を投げてたもんな…………――というかさ、なんでそうバカ力なわけ? 鍛えてんの?」
「俺は運動部に所属した経験はない。ただのテコの原理だ」
「マジかよ。今度から頭いい奴は怒らせないようにするわ」