にこりともしない完璧な美貌をした宮應が、毛先にいくほど大きくウェーブを描く長い髪を鬱陶しそうに背中に払うそばで、華奢な美少年である西園寺は、考えの読めない貴公子のような愛想たっぷりの微笑を浮かべている。

 沙羅は宮應を目に留めるなり、笑顔で「こんにちは」と挨拶した。宮應も運動場の一件を引きずっている様子もなく「こんにちは、今日も元気ね」と、ちょっとだけ口角を引き上げるような笑みを浮かべる。

 女同士で何かしらあったのだろうか。理樹が不思議に思っていると、レイもまたどこか愛想良く「生徒会長、こんにちは」と言って、それから西園寺へと視線を移した。

「委員長、何かあったんですか?」
「ん? 特にも何もないよ?」 

 どうして、と訊き返す西園寺に対して、レイは小首を傾げて言葉を続ける。

「だって生徒会長と並んで歩いているのって、大抵問題ごととか会議に向かう時だった気がして」
「あははは、なるほど。ちょっと一緒にご飯でもどうかなって、僕が彼女を誘ったんだよ」