んなこと考えて食事するなよ、と理樹はレイに呆れた眼差しを向けた。
 それは男目線の意見だ。同じ女子で、しかも親友という立場であるのなら、むしろやってくれるなと思ってしまう。

 苦悩するように頭を抱えていたレイが、ふと視線に気付いたように顔を向けた。頬杖をついて彼女を見ていた拓斗が、目が合うなり、意味深ににっこりとする。

「俺はどちらかというと、レイちゃんが食べてるのを見る方が面白いけどな?」
「ひぃぇ!? なんだか分からんが、お前は僕を見るな! そしてちゃん付けで呼ぶんじゃないッ」

 レイが警戒を覚えた猫のように身を引いた。理樹は、やはり過剰反応だと小さな疑問を覚えて、つい隣にいる親友を横目に見やり「おい」と呼んで声を掛けた。

「お前らは喧嘩でもしてるのか?」
「いんや? 仲良くしてるだけだぜ」
「にしては、やけに警戒されてるみたいだが」
「ははは、多分あれだ、彼女は野生の勘が働くタイプ」

 その時、席を外していた沙羅が戻ってきた。冷水の入った紙コップをテーブルに置くと、何か言いたそうな顔で、恥じらうようにもじもじしながら席につく。露骨に「可愛いなぁ」と表情を緩めていたレイも、遅れてそれに気付き首を捻った。