「ごめんってばッ、つい悪戯心な親切心が出たというか! ――ん? というかさ、もしや俺に報復するレベルの何かが起こったのか?」
「気配で起きた」
「あ~、まぁ、だよなぁ。何もなかったって面してたもんなぁ」

 理樹に開放されたところで、拓斗は「ひでぇ目に遭った」と軋む身体を起こした。

「つか、沙羅ちゃんの告白が始まってから、お前って意外と冷静でクールな奴なんだなってことが分かったわ」

 そう言いながら、椅子に座りなおした理樹へと目を向けてこう続ける。

「というかさ、俺としては、沙羅ちゃんを応援したい気持ちもあるんだよなぁ。走ってるのを見て、あんなに一生懸命だったらなって思ってさ」

 お前どうするつもりでいるの、というような目を拓斗に向けられた理樹は、その視線をしばらく横顔で受け止めていた。

 どうするもこうするも、こんなこと続いていいわけがない。

 けれど、それを口にすることも出来ないまま――結局のところ理樹は、話を変えるように「俺は少し寝る」と告げて、並べた椅子に横になった。