自分でも驚くほど乙女なことを考えている。

 恋よりも食い気だと、お父さんやお母さんや、兄さんたちによく言われた。私だって、ずっとそう思っていた。大好きな家族がいて、笑っていて欲しい友達に出会えて、それ以上の幸福なんてないだろうと思いながら過ごしてきたから。

 初恋をしたその日に、初めて告白したその瞬間に、ものの見事に玉砕してしまった。涙が溢れそうになって、こんなにも痛くて苦しいほどの『好き』を知った。

 心が沈みそうになるだなんて、きっと自分らしくない。

 だから頬を叩いて難しいことは考えない、好きよと伝えて頑張るのだと決めた。中学生の頃に、恋に前向きに頑張っていた女の子たちのように。

「よしっ、今日こそ九条君のファースト・ハグをゲットするのよ!」

 沙羅はそう意気込んだところで、自分が何かを忘れているような気がした。置き時計を見てみると、なんと時刻は先程よりも過ぎてしまっていた。

 慌ててベッドから降りようとした沙羅は、寝る時にはいつも、自分が大きなシルクのシャツ一枚であったことをうっかり忘れていた。その裾につまずいて思い出したものの、彼女は体勢を立て直す暇もなく、派手に床へ転がり落ちた。            

             ※※※

 大きな物音を聞いて慌てて部屋にやってきたメイドは、床の上でパンツ丸見えの姿勢で頭を床に押し付けている沙羅を見て、しばし沈黙した。