本当は分かっているのだ。迷惑かもしれないと分かっていて、でも諦めることなんて出来なかった。少しずつでもいいから近づいて、少しずつでもいいから、この恋が叶ってくれることを祈っている。

 触れた時のことは、一つ一つ、全て覚えている。

 はじめは、手を差し伸ばされかけただけで、触れることすら叶わなかった。なぜなら彼は、いつも途中で手を止めて、引っ込めてしまうのだ。

 そうしていたら運動場で、彼の方から手を差し出してきた。そっと触れても彼は逃げなくて、ようやく手を握ることが出来ただけでもすごいことなのに、気付いたら彼に抱き上げられていたのだ。

 彼の方から触れてきて、初めて脇腹に抱えられて屋上から出された時の温もりを覚えている。
 保健室に突入した際、隣にどかされた逞しい手だって、兄さんたちがするよりもずっと優しくて全然痛くもなくて、嗚呼、この人は私をとても気遣っているのだと分かった。

 一緒に過ごす時間を重ねるたび、期待してしまう。

 どうか少しずつ、この恋が叶えばいいのに、と。