「ぎゅっとするんだろ? とはいえ、一回だけだからな」
「え」

 言われた言葉を理解するのに、沙羅は数秒かかったようだ。二秒半後ほど硬直していたと思ったら、ぶわりと赤面してそのまま動かなくなってしまった。瞳は羞恥の熱で潤み、今にもこぼれおちそうなほど見開かれている。

「無理ならこっちからするが」

 理樹はそう言って彼女の手を取ると、そのままぐいっと引き寄せて、正面から自分の腕の中に閉じ込めた。
 

 抱き締めた身体は、やはり前世で出会った頃と何一つ変わっていない気がした。

 全体的に華奢で、第一子を懐妊してからはコルセットを無理に付けさせなくて、本人も結局は、外に行くとき以外はやらなくなった。それでも尚、腰は相変わらず細いままだったのを覚えている。

 
 ただの気紛れなのだ。
 目覚めたばかりのせいでもあるのかもしれない。

 ここ最近は、毎夜ほとんど同じ夢を見るのだ。繰り返し当時を見せられ、そのたび声もなき慟哭に歯を食いしばる。
 なぜ、放っておいてくれない。どうして君は、再び俺の前に現れた?