「チクショー九条理樹! 沙羅ちゃんがあんなに頑張ったのに完全スルーとはッ」
「お前はそれでいいのか?」 

 歩きながらチラリと目を向けて冷静に問いかけると、レイがハッと気付かされたように頭を抱えた。

「どうしよう。そういえば僕が応援したら、僕の沙羅ちゃんが狼に食われることに!? けどッ僕は彼女の親友として邪魔することはできな……ぐぅうッ」
「ははは、お前って案外抜けてるところもあって可愛いなぁ」

 そう言って拓斗が、レイの頭をぐりぐりと撫でた。
 途端にレイがカッと頬を染めて「犬みたいに撫でるな!」と、ぺいっとその手を払いのける。

 理樹は、なんだか過剰反応だなと思って足を止めたものの、何も言わなかった。沙羅が不思議そうに同性の友人を見つめる中、拓斗も意外だとでもいうように目を丸くし、それからどこか思案気にレイを見つめた。

「おい佐々木拓斗! 僕をじっと見るの禁止!」
「レイちゃんは、スカートは履かねぇの?」
「お前は僕の話しを聞いてたか!? というかッ、僕が着たら女装になるだろ!」

 レイが、怒ったようにそう主張した。

 いやお前女だろ、と理樹は心の中で思った。