「お前はやれるだけやったよ。最後のお前、すげぇかった良かった」

 そんな訳がないだろう。
 俺は、ただ彼女を運んだだけなのだ。

 はじめに止めるべきだったろうと、どうしてお前もそう言わない?

             ※※※

 煩わしい視線がなくなったその翌週の水曜日、ようやく沙羅が登校してきた。
 理樹はそれを――

 正門に辿り着いてすぐ、今、自分の目で知ったところである。

「………………」
「なんだッ、その残念なものを見る目は!?」

 理樹の目の前には「絶好のチャンスだったのに、また失敗してしまうなんて……」と自身の運動能力の低さにショックを受けている桜羽沙羅と、躓(つまづ)きそうになった彼女を慌てて支えた男装の風紀部員、青崎レイの姿があった。

 そうなるまでの一連の様子を見ていた拓斗が、掌に拳を落としてこう言った。

「うん、いつも通りで逆に安心したわ。それ、まだ続いてたんだな」

 いつも通り過ぎて残念だ。理樹はそう思いながら、ふぅっと息を吐いて視線をそらし、ぼそりとこう感想した。