そうなのかと眼差しで問うと、近くにいた田中や木島、そして他のクラスメイトたちがのんびりと笑った。近くを通っていった男子生徒の一人が、「茶化して悪かったよ」と小さな苦笑と共に詫びた。

 止めようと思えば出来た筈だと、誰かがそう非難してくれるだろうと思っていた。だからそれは、理樹が予想もしていなかった反応だった。
 

 悪党のようだと、どうして誰も俺を責めないんだ。

 他のどの生徒ではなく、騒ぎの元である当人の自分であったら止められる可能性はあっただろう。そう昨日を思い返して、理樹は皮肉に口角を引き上げた。けれどどうしてか、いつものような不敵な笑みが上手く作れなかった。


 告白は断っているだろう、誰とも付き合う気はない、だからどっちも出て行ってくれと……昨日の一件については、そう強く拒絶していれば終息するような子供じみた騒ぎだった。

 すると、こちらを見た拓斗が、クラスの生徒たちを代表するようにこう言った。