そう自信たっぷりに言ってのけたのは、拓斗だった。すると、その第一声を聞いた周りの少年少女たちも「そうよね」「そうだよ、反則じゃない」と、次々に同意の声を上げ始めた。

 理樹は無表情のまま一つ頷いて、沙羅へと視線を戻した。

「――だそうだ。だから、手を取れ」

 渋るような間を置いた沙羅は、伺うよう周りの様子に目を向けた。彼女と目が合った拓斗が「ん!」と呑気な笑顔で親指を立て、それに少し遅れて、周りの生徒たちが必死に何度も頷く仕草を返した。

 沙羅は彼らを見渡してから、こちらを見上げてきた。じっと見つめていると、その視線が手へと降りて、彼女がそろりと自身の手を伸ばしてくる。

 擦り傷と土汚れがついたその華奢で白い手が添えられてすぐ、理樹はしっかりと握りしめ、そのままぐいっと引っ張り上げた。びっくりした彼女が「きゃっ」と声を上げるのも構わず軽々と抱き上げると、迷わずゴールに向かって歩き出した。