「もし宮應君が勝ったとしたら、少しの間、君は彼女から自由になるわけだ。告白を断り続けているというくらいだから、一見すると君にとっては、とても都合がいい結果と思える。その考えを踏まえて言ってしまえば、桜羽沙羅が勝つという結果は、君にとって望ましくないということになるだろう」

 でも、本当のところはどうなんだろうねぇ。

 西園寺が、こちらにチラリと顔を向けて、考えの読めない美麗な笑みを深めた。

「僕は『九条理樹』という生徒をよくは知らない。前回に初対面を果たして、今回がようやくの二回目だ。けれどね、どうも君の本当の望みが分からないんだよ」
「………………」
「君を知っている生徒に話を聞くと、『九条理樹』はどこにでもいる平凡な男の子だ。でも僕が見る限りでは、たぶん三年生の中でも、君ほど大人びた芯というか、しっかりとした考えを持った生徒も少ないと思うんだよねぇ」

 まぁ、これは僕の勘なんだけどね、と彼は肩を竦めて見せた。