青崎レイと、黒い制服姿の二人の風紀部員は、見届けるために集まった生徒たちの前に、ここから前に出ないようにと線を引くように、後ろに手を組んだ状態で並んで立っていた。
 普段は番犬みたいであるレイも、今はいっぱいの不安をこらえた表情をしていた。本当は止めたくて、そばに行きたくてたまらないのだという目を沙羅に向けている。

 五十メートル競走場の隣には、急きょ野球部から借りてきた休憩用テントも置かれていた。そこに用意された見学席へ宮應が腰かけたタイミングで、西園寺は見物人がいる場所よりも手前の、自分の斜め後ろという位置に立っていた理樹を振り返った。

「レイ君から話は聞いたけど、君も災難だったね。というか、宮應君がその手に弱かったというのも意外だったよ」
「俺も助けた時は、まさか武道派の生徒会長だとは思わなかった」

 ここへ来てから、理樹はようやくそう口を開いた。

 集まった見物人の脇に立つ拓斗と離れてから、理樹は今までずっと、無言のままこの場の状況をじっと見つめていた。彼とは二回目の顔合わせとなった西園寺は、「タメ口のままで安心したよ」と微笑み、それから思案気に胸の前にさがったホイッスルに指先で触れた。