その三年生の少女は、全体的に痩せ形で、少し癖の入ったふんわりとしたショートカットの髪型をしていた。体育着のズボンから覗くふくらはぎは、筋肉がなくて細い。互いに自己紹介した際、彼女は簡単に美術部部長の森田だと名乗った。

「走るのは苦手なんだけれど……。静ちゃんに全力で走れって言われているから、よろしくね」

 森田はぎこちなく笑って、そう挨拶した。

 五十メートル競走用の各レーンからほんの少しの距離には、校舎を背景に、審判を務める男子生徒が一人立っていた。
 三年生にしては小柄で細く、女性のように艶があるさらりとした癖のない髪に、運動場にいようともその存在感を際立たせる黒い制服と、美し過ぎる美貌を持った――風紀委員長の西園寺(さいおんじ)瑛士(えいじ)だ。

 西園寺は渡されたホイッスルを首にさげたまま、競技開始の合図を前に、沙羅が真面目な表情で森田と向かい合う様子をしばし眺めていた。彼女たちの挨拶が済んだところで、思わずといった様子で溜息をこぼす。