放課後になってしばらくもしないうちに、校舎に面した運動場側に勝負の場として用意が整えられた。敵無しと知られる最強生徒会長と、一人の男子生徒にアプローチを続けていることでも有名な、一学年の小動物系美少女の対決勝負である。

 種目は五十メートル競走だ。そのトラック競技のレーンがある場所には、沙羅のクラスである一組と、理樹がいる五組の、部活動で来られなかったメンバーを除いたクラスメイトたちが集まっていた。
 その見物人の中には、話を聞きつけた彼女を知っている他クラスの一学年生と、数人の三学年生も混じっている。

 急きょ五十メートル競走の場所を貸すことになった陸上部たちが、そこから少し離れた場所で準備運動をしながら、チラチラとこちらを見ていた。校舎の窓から顔を覗かせて、始まるのを待って見守っている生徒たちの姿も多くあった。

 五十メートル競走の二つのレーンには、運動着に身を包んだ二人の少女が立っていた。
 第一レーンには、長い髪を後頭部の高い位置で一つにまとめた沙羅。そして、競技開始前の彼女と向かい合うようにして第二レーン上に立っているのは、華奢な彼女よりも背丈が高い三年生の女子生徒だった。