「勝ったらって一体……それに私が『お願いを聞く』というのは…………?」
「手っ取り早く白黒を付けるために、勝負しましょう、桜羽沙羅さん」
「…………しょう、ぶ……?」

 ここで、沙羅が初めて不安を表情に滲ませた。
 先程、彼女の本気だと分かる大声を聞いていたレイが、口を挟むことは出来そうにないとこらえる様子で、戸惑いながらも視線を忙しなく往復させて見守っていた。

 勝負というのは穏やかではない。理樹は「おい」と言いかけたが、それよりも早く宮應が口を開いていた。

「私は三年生という受験生であり、生徒会長という多忙な身なの。その間の少ない時間を使って、九条理樹と交流を取ってみたいと思っている。だから手っ取り早く白黒付けたいのよ。彼に対して真剣でないのなら、あなたにはしばらく大人しくしていて欲しいと考えているわ」

 そこで、と美麗な生徒会長はにこりともせずに告げる。

「トラック競走で勝負を挑むわ」
「……つまり走って勝負を付ける、ということですか……?」