「だからといって、私は自分の価値観を誰かに押し付けるような愚かなことはしないわ、本気で恋をしている女の子の邪魔をするつもりはないのよ」

 恋愛がどんなものであるか想像して憧れる気持ちは分かるもの、と宮應は秀麗な眉を顰めて呟いた。一度足元に視線を落とすと、すぐに沙羅へと戻す。

「だから、そこまで言うのなら正面からあなたと向き合うわ。らしくなく興奮してしまって気付かなかったのだけれど、自分の個人的な意見だけで『しばらく彼に近づかないで』と誰かの行動を制限するなんて、そんな権利は誰にもないものね」

 つまりコレは『お願い』ということになるわね、と彼女は思案するように言って、片手を解(ほど)いて説くように手振りを交えて話の先を続けた。

「私は時間をかけるような話し合いは好きではないわ。だから私が勝ったら、あなたは『彼の周りをうろちょろするのを少しやめる』という『お願い』を大人しく聞いてもらえないかしら」