「ちょっと女の子らしい扱いをされたからって、漫画のシチュエーションみたいなんて思ってトキメいたわけじゃないわよ! タメ口で話す攻めの年下男子にキュンとした、とかではなくて気になっているからお話しとかしてみたいなぁ、なんて思ってしまっただけであって、そのへんは勘違いしないでよねッ」
「………………」

 ちょっと助け出した出来事で安易に惚れた、というものではないらしいと知れたのは、安心するべき点ではある。
 しかし、その際になぜか、そういった恋愛シチュエーションにこっそり人一倍の憧れを抱いていた女子である、と自ら告白までした生徒会長を前にして、理樹は返す言葉が浮かばなかった。

 反応に困る暴露宣言を聞いて、教室中が戸惑いと困惑に満ちた嫌な沈黙に包まれた。恥ずかしくて死にそうだという顔で言葉をまくしたてた宮應が、荒くなった呼吸を肩を上下させながら整える中、拓斗だけが気楽そうな表情を浮かべていた。

「ははは、外見のクールさを裏切る表情豊かなツンデレっぷり。沙羅ちゃんとは違った意味で可愛いタイプだなぁ~」

 拓斗は、本人を目の前に呑気にそう感想を口にした。

 理樹はそれを隣で聞きながら、後で覚えてろよ、とぶっ飛ばすことを決めた。すると宮應が、まだ熱とパニック状態が収まらない様子で「九条理樹!」と叫んだ。