彼女の微かに顰められた美貌は、冷やかにも受け取れ剣呑さが感じられる。それは昨日の帰りに助けてしまった女子生徒であり、数時間前に八人の他校生を叩きのめしたうえ、山のようにぞんざいに積み上げていた例の武道派生徒会長だった。

「……………………」

 正直に言っていいのなら、嫌だ、と即答してしまいたいシチュエーションだ。

 黙ったまま見つめていると、クラスメイトたちが、一体どうなるのだろう見守る様子で、ゆっくりとこちらを振り返った。
 その視線の先を追った例の女子生徒が「そこにいたの」と言い、微塵の迷いもなく手足を動かせて教室に入ってきて、理樹の前に立った。

「初めまして。私は三学生の宮鷹(みやおう)静(しずか)よ、生徒会長をやっているわ」

 あれだけ嵐のように強烈な武道派でありながら、大人しい響きのある『静(しずか)』という名前であるのも、なんだか印象的だ。

 確かに黙っていれば、どこぞのお嬢様らしさも漂う。しかし先程の行動を見た後だと、愛想のない態度や表情は気位の高そうなお嬢様気質というより、容赦ない女子版番長だと言われたほうがしっくりくる。むしろ、そっちの方が違和感がない。