一学年生とはリボンに入っているラインの色が違っており、大人びた容貌からしても恐らくは上の学年だろうと思われた。

 しばし走った後、理樹は足を止めて彼女に向き直り、突然走らせてしまったことを口頭で形上詫びてから言葉を続けた。

「正面切って意見するのも悪くはないが、相手が引く気のない複数名の男だったら、周りに助けを求めるか、とっとと逃げた方がいい」

 じゃあな、と、理樹は興味もなく女子生徒に別れを告げると、これから買う食材へと思考を切り替えて、近くなった大型スーパーへと足を進めた。

             ※※※

 翌朝、一時間目の授業が終わった休憩時間に、理樹は椅子に腰かけたまま気だるげに腕を伸ばした。前の席にいた拓斗が、「どうしたよ?」と尋ねてくる。

「理樹にしては、珍しく一時間目から眠そうにしてたな」
「おい。なんで前の席のお前がそれを分かるんだ」

 理樹は指摘した後、次の授業である歴史の教科書を引っ張り出しながら、昨日に遭遇した小さな騒動の後の行動について思い返した。