今日は面白いテレビ番組もやるし早めに帰るか、というあっさりとした理由で、一時間ほど部室で過ごした後に理樹は拓斗と帰路を共にした。
 次第に夕暮れまでの時間が伸びてきており、午後六時前でも空は明るかった。

「もう五月かぁ。早いな。理樹、中間テストの範囲が出たらノート見せてもらってもいいか?」
「前々から思っていたが、もっとちょっと真面目にノートを取った方がいいぞ」
「書くところは書いてんだけど、お前みたいにキレイにまとめらんねぇんだもん」

 テスト前になると、毎度ノートを見せるついでに、一緒に勉強するのが恒例だった。
 要所ごとに行を空けたり、線を引けばだいぶ変わるのではないかと思うものの、それが加わったとしても読みにくいのが拓斗のノートだった。集中力もないので、所々妙な落書きがされていたりする。

 理樹は、朝にいつも合流している通学路の中腹にある分かれ道で拓斗と別れ、少なくなってきている冷蔵庫の食材を補うため、マンションがある住宅街の道を真っ直ぐ進まず一旦街中へと抜けた。