五組のクラスメイトが応援心と期待感を込めて見守る中を、「室礼します」と明るく言って入ってきた友人たちと共に、沙羅が進んできた。

 途中でその少女たちに「頑張って」と背中を押され、彼女たちを教室の中央に残して一人でこちらの目の前に立つ。その沙羅の大きな瞳は潤っていて、明るくも見える茶色がより映えて見えた。

 しばし目を合わせていると、彼女がちょっと緊張した様子で、ふっくらとした血色の良い唇をきゅっとして、両腕で大事そうに抱えた桃色の袋をチラリと見下ろした。その際に、ほんのりと赤くなった頬に、ブラウンよりの色をした髪がさらりとかかった。

 その時、机の下から、拓斗が足で軽くつついてきた。

「お前さ、真顔をちょっと変えるか、先に何か声をかけてやったほうがいいんじゃね?」

 他にどういう顔をしろと? 

 そう答えるように、理樹は横目に拓斗を見やって小さく眉を顰めた。そもそも、彼女を期待させるような態度を取るつもりはない。