「これは、確実に来るな」
「何が」
教科書をしまうのもワンテンポ遅れていた理樹は、欠伸を噛み締めながらそう尋ねた。
その時、廊下側から、少数の女子生徒の華やいだ話し声が聞こえて近づいてきた。教科書を引き出しにしまったタイミングでそちらへと目を向けた理樹は、教室の入り口に現れた沙羅の姿に気付いて、先程の『クッキーイベント』の話題を思い出した。
どこか緊張しつつも照れた様子で頬を染める沙羅の両脇には、同じように色のついた袋を抱えた見知らぬ女子生徒が二人いた。鼻先に甘い匂いが掠めて、それが焼き上がって間もない菓子独特のものだと分かった。
同じ方向を見ていた拓斗が、こっそりこう言ってきた。
「調理実習で作ったクッキーって、チョコチップ味もあんのかな?」
「…………お前、楽しそうだな」
というか、単にココアパウダーを混ぜたチョコ味の可能性は考えないのか?
理樹は、前世の頃に料理経験が豊富にあったこともあり、興味があって幼い頃から母に料理を教えてもらっていた。中学生だった頃までに菓子作りも一通りやっていたので、漂う甘い匂いの中に含まれるチョコ風味の匂いには覚えがある。
「何が」
教科書をしまうのもワンテンポ遅れていた理樹は、欠伸を噛み締めながらそう尋ねた。
その時、廊下側から、少数の女子生徒の華やいだ話し声が聞こえて近づいてきた。教科書を引き出しにしまったタイミングでそちらへと目を向けた理樹は、教室の入り口に現れた沙羅の姿に気付いて、先程の『クッキーイベント』の話題を思い出した。
どこか緊張しつつも照れた様子で頬を染める沙羅の両脇には、同じように色のついた袋を抱えた見知らぬ女子生徒が二人いた。鼻先に甘い匂いが掠めて、それが焼き上がって間もない菓子独特のものだと分かった。
同じ方向を見ていた拓斗が、こっそりこう言ってきた。
「調理実習で作ったクッキーって、チョコチップ味もあんのかな?」
「…………お前、楽しそうだな」
というか、単にココアパウダーを混ぜたチョコ味の可能性は考えないのか?
理樹は、前世の頃に料理経験が豊富にあったこともあり、興味があって幼い頃から母に料理を教えてもらっていた。中学生だった頃までに菓子作りも一通りやっていたので、漂う甘い匂いの中に含まれるチョコ風味の匂いには覚えがある。