口説きまくる宣言をした皆見君は、朝と夕以外にも私に会いに来た。
休み時間はもちろんだし、お昼ご飯も誘ってくる。
しまいには「サッカー部の練習試合見に来やん?俺1年やけど出るから」と、恥ずかしそうにしていた。

友達と見に行った練習試合で皆見君はゴールを決めていた。友達は「かっこいいやん」と褒めていた。そんな友達に「そうやな」と笑った。



皆見君を受け入れたのは、いつだったのか。
あんなにも愛を伝えられて、まだ分からない訳もなく。




──…夏祭り、浴衣を着た私を見て、皆見君は「可愛すぎる…!!」と手で顔を隠していた。そんな皆見君を見て、私もクスクスと笑った。



「俺なあ、分かったかもしれん」

屋台で買ったりんご飴を食べている時、フランクフルトを手に持っている皆見君が、夜空に浮かぶ花火を見ながら言った。


「前世でも佐野さんのこと想ってたんやろなあって。だから来世でも佐野さんと会うまで探し続けんちゃうかな」


いつまでたっても口説き続ける皆見君に、私は笑った。


「そんなに好きなん?」

「うん」

「なんか、初めに喋りかけてきたとき、雰囲気が好きとか言わんかった?」

「俺もよく分からんねん。他の子であの子可愛いなあとかは今までも思ってたんやけど、なんかちゃうくて…」

「わからんの?」

「ほんまにピーンてきた、他の男にとられたらヤバいって思って。彼氏おらんでよかった〜」

「いてたらどうしてたん?」

「いや、でも、絶対結婚すんの俺やから。別れてくれって頭下げたかも」

「おらんでよかったな」

「ほんまそれな」


クスクス笑っている私の顔を見つめてきた彼は、「手ぇ繋いでい?」と、フランクフルトを持っていない手を差し出してきた。

自然と手を重ねた私はきっと、彼に恋をしてると感じ取っていた。

特に取り柄もなかった。
顔も、背丈も標準。
そんな私にプロポーズした彼と、夏祭りの帰り道に正式に付き合うこととなった。



皆見君はすごく喜んでいた。
今すぐ婚姻届書きたいとはしゃいでいた。
「愛してるよー!」と花火が上がっていた方の空に向かって叫んでいた。


私は皆見君のことを(しょう)と呼ぶようになり。
翔は私をずっと照れたように美春(みはる)
と、何度も何度も言っていた。


翔の私への溺愛っぷりは、学校の先生にも伝わるほどで。高校生活の約3年間。翔と別れることもなく。
3年の習字の授業で〝好きな文字を書く〟というテーマで、翔は〝美しい春〟と書いていた。




別々の大学に進学しても、翔の恋人トークは収まらなかったらしい。
元々愛嬌のいい翔は、大学で新しい友達も増えたらしいけど、「俺の結婚する子!」と、私の紹介をして。


〝溺愛されてる噂の彼女〟と、私は翔の通う大学では有名らしかった。