ーーーーキーン!
学校のグラウンドに着くと、さらに甲高い金属音が私の耳に聞こえた。

ーーーーードクン。

「拓也、先輩‥‥‥」

こんなにも近くで彼の練習している姿を見るのが初めてで、私の心臓の鼓動が激しくなる。

「私は野球全然興味ないから、帰るね」

「え、ちょ、渚‥‥‥」

渚は手を小さく振りながら、すんなり家路へ向かった。

「渚ったら、もう‥‥‥。私が野球が好きじゃなく、彼が好きなのに‥‥‥」

私は、ひとつ先輩の吉田拓也先輩の方に視線を向けた。蒸し暑い夏、蝉の鳴き声と野球部のかけ声が私の耳に聞こえる。